私たちの生活に欠かすことのできない照明器具ですが、照明用の発光部品としてフィラメントに電流を流して発光させる白熱電球や、ガス中の放電現象を利用した蛍光灯などが利用されてきました。
しかし、白熱電球は光とともに熱を発するため、電気から光への変換効率としては限界がありました。
一方の蛍光灯は白熱電球よりはエネルギー効率が良いものの、有害物質の水銀を使用していることから、2020年を目処に規制対象となり、製造できなくなるといわれています。
そこで最近ではエネルギー変換効率が良く、有害物質も使っていないLED素子によるLED照明が急速に普及してきました。
LEDとは「発光ダイオード」のことで「電圧をかけると電流が流れて光を放つ半導体素子」というのは一般的にも知られてきているのではないかと思います。
発光ダイオード自体は1962年の赤色ダイオードの発明以来、1972年に黄色、そして1990年代に入り青色ダイオードが発明され、「光の3原色」が揃い、表現力が無限となり、近年では液晶テレビのバックライトなどにも使われるようになりました。
それと共に白色を表現できるようになり、元々電子機器の電源表示など、目印としての役割だけであったものが、次第に照明用としても利用されるようになってきました。
そして、蛍光管などに代わり家庭用の照明器具として使える実用レベルの明るさの「LED素子」が開発されて、蛍光灯や白熱電球に代わり照明器具の主役となってきています。
照明としてみた場合「LED素子」の最大の魅力は、消費電流が小さく低消費電力なところです、少ないエネルギーで明るい光を得られるため、効率がよく、結果的に節電に繋がります。
そして消費電力が小さいという事は放出する熱量も少なく、それまでの照明機器にくらべ、放熱板などの面積を小さくすることが可能となり、結果的に機器をコンパクトにすることもできるようになりました。
こうした様々なメリットがある新しい照明機器のための「LED素子」、その製造には様々なメーカーが参入しています。
有名なところでは日本の「日亜化学」や「豊田合成」、アメリカの「CREE」、ドイツの「OSARAM」など、このサイトで紹介している「LEDフラッシュライト」や「LEDランタン」の中にはだいたい、これらメーカーのLED素子が採用されています。
最近では照明用に特化した「パワーLED素子」なども開発され、市場投入されています。
「パワーLED素子」は、家庭用の照明器具だけでなく、ハンディフラッシュライトやLEDランタンなどにも内蔵されてきており、これらの商品の明るさスペック争いは熾烈なものになってきています。
ネット通販などでよく見かける「中華ライト」と呼ばれる、中国製の規格外なスペックを表記した「LEDフラッシュライト」のなかには、この「パワーLED素子」の型番を表記したものが数多くみられます。
「CREE社の”XM-L T6”を採用しています」などと記載されているものです。
これらの中には「パワーLED素子」の スペック上の最大値 を表示しているものがあり、実際にはその性能が出ていないものもあります。
「パワーLED素子」は単独では性能を発揮できません、電池や制御回路等により明るさが大きく左右されますので、「CREE社のパワーLED素子」を採用しているのでxxxルーメンの明るさを発揮できます、というような表記がされた商品には注意が必要です。
それでは例として「CREE社の”XM-L T6”」のデータシートでパラメータを見てみましょう。
Characteristics(特性)
①DC forward current(直流順方向電流)
直流順方向電流はLED素子に正方向に流れる電流値で、その最大値が Maximum の欄に記載されている。
このパワーLED素子では3000(mA)、つまり3(A)の電流まで流すことができ、それを超える電流を流すと破損することがあるという事です。
②Forward voltage(順方向電圧)
順方向電圧は順方向に電流を流した時にLED素子で発生する電圧降下を示したものです。
このパワーLED素子では700(mA)の電流を流すと素子の両端で2.9(V)、1500(mA)の電流で3.1(V)、3000(mA)の 電流で3.35(V)の電圧降下が生じると記載されています。
即ち、1.5(V)のアルカリ乾電池ふたつを直列にして3.0(V)電源をつくり、そのままLED素子の両端に電圧をかけたとしても、最大で1500(mA)弱までの電流しか流すことができないことになります。(電圧が足りない)
この電源でこれを回避して素子の性能を引き出すには昇圧回路を使って、電源電圧を高くする必要があります。
Flux Characteristics(品種特性)
このLED素子には末尾にコードがついており、色や明るさに種類があります。
そして種類毎に明るさや色温度などのスペックが違うのでそれを明記してあります。
例えば「クールホワイト」の素子、末尾にT6とついている品種は700(mA)の電流で明るさ280ルーメン、2000(mA)では明るさ692ルーメンと記載されています。
Electrical Characteristics(電気的特性)
順方向電流と順方向電圧の関係性のグラフ、電流値が大きくなるほど電圧値も大きくなってゆく。
例えば2000(mA)の電流を流すと、3.2(V)弱の順方向電圧となることが判ります。
最大定格の3000(mA)の電流を流したければ3.35(V)の電圧が必要となり、先程見た Characteristics(特性) の表の ②Forward voltage(順方向電圧) の数値と合致します。
以上のような感じでデータシートを見ると「パワーLED素子」の明るさを発揮するためには順方向電圧と電流値の関係があり、電源によって性能が大きく変化することがお判りいただけると思います。
単3乾電池でどれくらいの電流を流すことができるのか?
ここにパナソニック社製のエボルタ乾電池の「定電流連続放電特性」を示したグラフがあります。
左側からLR03(EJ):単4形、LR6(EJ):単3形となっていますが、単3電池では2000(mA)までラインがありますので2(A)程度ならば連続放電できる実力がありそうです。
単4形電池では1(A)までしかラインがないので単4形電池を電源としているフラッシュライトで素子のデータをそのままスペック表記している製品は製造側も理解していないのでやめておいた方が無難です。
18650リチウムバッテリーでどれくらいの電流を流すことができるのか?
日本では一般的に18650リチウムイオンバッテリーは流通しておらず、個人で購入する場合はネット通販などで入手することになるかと思います。
Panasonic製の「NCR18650PF 2900mAh」で最大放電電流10(A)と記載されていますが、中国製の粗悪品も出回っているためそれを基準に考えるのは危険です。
※KEEPPOWERの「18650 2600mAh」で6.2(A)
リチウムイオン電池はエネルギー密度が高く発熱出火や爆発などの危険性もあるため、製造元のしっかりとした安全回路の組み込まれた製品を選択することをお勧めします。
中華ライトを購入する際の注意点
CREE社のパワーLED素子を採用していることを前面に押し出して販売する「フラッシュライト」が氾濫しています。
価格的に見ても¥1,000前後でそれほどボッタクリの商売をしているものはあまり見かけませんので、「スペック表記はオーバーであること」と「クオリティはそこそこであること」と「サポートは期待できない」という事を認識したうえでお試しで購入してみても損害は無いかと思います。
また、上記でも述べましたが、乾電池ではCREE社製のパワーLED素子の性能は発揮できません。
性能を発揮するためには「18650リチウムバッテリー」が必須となりますが、安全回路の搭載された製造元のしっかりとしたバッテリーを選ぶようにしてください。