以前「時刻を知るためだけじゃない 見せるための個性的な腕時計」の記事内で、腕時計業界の動向を少しだけ見ましたが、2014年度までは腕時計の出荷数量と売上額は堅調に推移していました。
ここ最近ですが、国内腕時計メーカーの苦戦の様子が伝わってくるニュースなんかもチラホラと見ることがあります。
確かに、世界的に見ても景気の良い話などはあまり聞こえてきませんが最新の腕時計業界の動向はどうなっているのでしょうか。
今回も「一般社団法人日本時計協会」の時計データ・資料館よりその動向を見てみます。
「日本時計協会」とは?
時計の生産、貿易、流通及び消費の増進並びに時計産業に関する国際交流の促進を通じて、我が国時計産業の総合的な発展を図り、世界経済の発展に寄与することを目的として活動する協会で、正会員10社、賛助会員1社から組織されています。
事業内容は時計の生産や流通・消費に関する研究や資料収集・提供、そして時計に関するあらゆる事象の改善策や技術向上策の提案や推進、関連機関との連携などを進めています。
2016年現在はオリエント・セイコー・シチズン・カシオ・リコー・リズム時計と、日本の時計メーカーすべてが名を連ねている組織となっています。
日本のウォッチ完成品出荷数量及び金額の推移
ウォッチ出荷数量は6870万個で前年比1%増ですが、金額は2863億で前年比15%増となっています。
このデータだけでは金額増が為替の影響なのか高級化の影響なのかは判りません。
次は完成品ウォッチの輸出量の推移です
輸出数量は約1%の微減となっていますが金額ベースでは11%増となります。
為替相場は2014年は100円台前半、2015年は120円台の攻防であったと記憶していますので金額ベースの増加は為替の影響が大きいとみることができますね。
次は完成品ウォッチの国内出荷量の推移です
国内出荷数量は15%増で金額は21%増、国内販売は為替の影響は受けませんしインフレが進んでいるわけでもないので国内ではやや高級化路線となっているといえるかもしれません。
日本のウォッチ市場規模
日本時計協会のサイトに同協会が推計した日本国内のウォッチ市場規模の表があります。
国内メーカー品の数量及び金額が増えていることは喜ばしいことではないかと思います。
しかし、数量の構成比が、国内メーカーの占める割合は全体の25%、つまり4分の1しかないことを残念に思います。
日本には世界を代表する腕時計メーカーがいくつもあり、その技術力は世界的に見ても高い水準にあるといえます。
その国内メーカー製の高品質な腕時計がお膝元である日本の市場では25%しか占められていないという事実。
少し寂しくもありますが、腕時計という商品の性格上、ブランド志向が高いのは致し方ないところかも知れません。
ウォッチの世界生産量
日本では市場の4分の3を海外ブランドが占めていることが判りました。
それでは、全世界で見たときに腕時計の生産量はどれくらいなのでしょうか。
2015年には14億6400万個生産されているという推計値があります。
先程の日本のウォッチ完成品出荷数量データでは国内メーカーの完成品出荷数が6870万個でしたから、国内メーカーは全体の4.7%程度を出荷している計算となります。
このデータを見ると、機械式腕時計の割合が少ないことにも驚きます、腕時計の主力は高価なアクセサリーではなくやはりアナログクォーツなんですね。
日本を代表する腕時計ブランド
SEIKO
機械式からクォーツ式まで、多彩なモジュールで商品展開し、ブランド力が高く美しく精巧な腕時計を世に送り続ける「SEIKO」は、世界初のクォーツウォッチ「アストロン」を商品化して発売するなど、技術力で世界の腕時計業界を引っ張ってきたといえます。
SEIKOのお勧めブランドは「Grand Seiko」、メカニカル・クォーツ・スプリングドライブと3種類のムーブメントで商品をラインナップしています。
中でもスプリングドライブはSEIKO独自の技術で、機械式時計に用いられるぜんまいを動力源とし、ローターの回転運動を電気エネルギーに変換して、そのわずかな発電でクオーツ式時計に用いられるICと水晶振動子を駆動する、という電池も充電池も必要としないクォーツ式腕時計です。
機械式腕時計とクォーツ式を融合したSEIKOオリジナルのムーブメントです。
CITIZEN
SEIKOと並ぶ日本の腕時計ブランドであるCITIZENは、その名前の由来のように市民に親しまれる良い製品を提供し続けます。
クォーツ式腕時計の商品化はSEIKOに遅れを取りましたが、世界初のアナログ式太陽電池ウオッチ、世界初の多極受信型・アナログ多針式タイプ電波時計、世界初アンテナ内蔵型フルメタルケースの電波時計、と業界をリードし続けています。
シチズン時計は高品質な商品が低価格で提供されていますので腕時計のような宝飾品としてのブランドイメージとしては決して高くはありませんが、技術力については間違いなく業界トップクラスであると思います。
CITIZENお勧めのブランドは「The CITIZEN」、高精度エコ・ドライブ、高精度クォーツ・オートマティックと3種類のムーブメントで商品をラインナップしています。
中でもクォーツ式ムーブメントは、精度が年差±5秒と、世界最高水準の高精度で電波受信の必要もない程に殆ど時刻が狂いません。
CASIO
腕時計ブランドとしては後発のカシオは、1974年にクォーツ式デジタル時計「カシオトロン」で腕時計業界へと参入しました。
参入当初は低価格の液晶表示の腕時計の登場に、腕時計の商品価値を貶めたなどと酷評されることもありましたが、その後「G-SHOCK」の登場で腕時計ブランドとしての地位を確立していきます。
頑丈で高機能なデジタル式腕時計を低価格で提供することで、ユーザーの特に若者の支持をしっかりと得て、一時は品不足となるほどの大ヒット商品となりました。
CASIOお勧めのブランドは、やはりゆるぎない「G-SHOCK」です、タフソーラーやトリプルセンサーなど搭載した高機能なモデルもあり、「GPSハイブリッド電波ソーラー」を搭載したモデルまであります。
「OCEANUS」などの高級路線も頑張ってはいますが、やはりCASIOといえば「G-SHOCK」ですね。